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「センター試験逃げ切り型」の現実

  • 2018年5月5日

質問


質問者
私は国公立大学医学部を志望している3浪生です。センター試験で高得点を取ることができれば、2次試験よりもセンター試験の比率の高い医学部では合格の可能性が高まると思います。このような「センター試験逃げ切り型」という戦略でこれまで受験してきていますが、昨年度はセンター試験の得点率が91%もあったのに、国公立大学医学部の2次試験、さらに、東邦大学医学部、杏林大学医学部、昭和大学医学部の1次試験で不合格になりました。私のような「センター試験逃げ切り型」では医学部に合格することはできないのでしょうか?

回答

 国公立大学医学部を志望されているのでしたら、当然のことながら、センター試験はかなり重要なものになります。国公立大学医学部に合格するには、大学にもよりますが、概ね9割程度の得点率が必要になります。そのため、受験生としては、国公立大学医学部を志望すればする程、センター試験対策に多くの時間を割きたくなりますし、もちろん一定の時間を割く必要があります。しかし、センター試験対策ばかりをやっているとどうなるでしょうか。

― ここで私のいる東大螢雪会のある生徒さんのお話をさせていただきます。その生徒さんは、国公立大学医学部を志望していたものの、現役と1浪の時に、共にセンター試験で失敗していました。当会にご入会いただいたのは、2浪目の春のことでした。私がその生徒さんに初めてお会いした時に、その生徒さんの第一声はこうでした。「どうしても国公立大学医学部に受かりたいんです。毎年センター試験で失敗しているので、とにかくセンター試験対策を徹底的にお願いします。センター試験で高得点を取って、逃げ切りたいんです。一応私立大学医学部も受験しますが、国公立大学医学部の対策をとっていれば、特に私立大学医学部のための対策はとらなくても大丈夫だと思います」これを聞いた私は彼に言いました。「国公立大学医学部に合格するためには、センター試験で高得点を取る必要があることは言うまでもありません。しかし、その後の2次試験対策も十分に進めておかないと、合格は厳しいと思います。また、国公立大学・私立大学のどこであっても、医学部は各大学の看板学部ということもあって、入試問題は非常によく練られたものになっています。そのため、たとえ私立大学医学部の下位校と言われるところであっても、1次試験の過去問対策を十分に講じておかないと合格は厳しいと思います」しかし、彼は「まずはセンター試験なんです。とにかくセンター試験対策だけをやってください」と言い、私のアドバイスを聞き入れてくれませんでした。
 その生徒さんはそれ以降センター試験対策に没頭していました。その成果として、センター試験型の模試では常に90%以上の得点率を維持していました。それに応じて、記述試験型の模試でも成績は伸びていきました。しかし、センター試験対策ばかりに没頭する彼の姿に不安を感じていた私は、折に触れて、国公立大学医学部の2次試験対策と私立大学医学部の1次試験対策を行うように彼を説得しました。しかし、残念なことにそれは暖簾に腕押しのようなものでした。
 そして、センター試験が終わり、彼の得点率は92%となりました。彼は「先生、センター試験が成功したので、もう合格したも同然です!しかも、合格の可能性をさらに高めるために、受験校は志望校よりも1ランク難易度の低い、センター試験の比率がさらに高いところにしました」と言いました。そこで私は「いくらセンター試験の得点率が高くても、まだまだ合格するかどうかは分からない。とにかく国公立大学医学部の2次試験対策と私立大学医学部の1次試験対策をやろう」と言いました。その後彼はやっと過去問に手を付け始めましたが、時すでに遅しでした。受験した国公立大学医学部の前期試験、私立大学医学部5校の1次試験ですべて不合格になってしまいました。
 3浪目の春、私は彼とじっくりと話し合って、彼はそれまでの勉強に対する考え方を見直す決心をしてくれました。センター試験対策には一定の時間は割いていくものの、国公立大学医学部の2次試験と私立大学医学部の1次試験の対策にも軸足を置いて勉強を進めることになったのです。そうしたところ、センター試験型の模試であっても、記述試験型の模試であっても、成績が安定し、志望校であった国公立大学医学部と私立大学医学部4校に見事最終合格することができました。
 2014年度の国公立大学・私立大学医学部の入試では、定員9069名に対して、受験生は延べ14万人超となりました。このように非常に狭き門となっている医学部入試においては、「センター試験逃げ切り型」ではなかなか合格できないのが現実です。やはり、どんなにセンター試験が得意であっても、国公立大学医学部の2次試験対策と私立大学医学部の1次試験対策はもちろん必須とお考えください。